椎名雄一郎さんのオルガンコンサートへ行きました。会場は日本基督教団番町教会。会場の広さや天井の高さ、空間に活きたパイプオルガンで、なんとも音色が柔らかく彩り豊かで、魅了されました。これも椎名さんのストップの組み合わせ方や音色への細かいこだわりや配慮があってこそだと感じました。音にこだわりをもつこと…ピアノの演奏においても決して忘れてはいけないことだと改めて思いました。今週は生徒さんたちと「曲にぴったりな音探し」をテーマに、レッスンをしようかな、と考えています。
レッスンで取り組む曲が、いつでもスラスラと演奏できる曲であるとは限りません。なかなかうまくいかないな、これ以上続けるのはしんどいだろうな、と判断した場合は「ここまでよく頑張りましたね!新しい曲を始めましょう。」と切り替えることにしています。ですが、数週間後にその時難しかった曲に戻って「もう一回弾いてみませんか?もしかしたら今なら弾けるかもしれません。」と声掛けをすることにもしています。その時スムーズに弾けなくても、新しい曲を進めていく中で新たな力が付き、楽譜をフレッシュな状態で見直すことができ、「あれ?今なら弾ける!」につながるのです。「あの時難しく感じたけれど、今はそんなことない」と自分自身で上達を感じることは演奏への自信につながり、より演奏の楽しさを感じてもらえるのではないかと思います。「弾けた!」は大きな喜びですから。
昨日は三宮正満さん(バロック・オーボエ)、野崎真弥さん(バロック・フルート)、田中孝子さん(ヴィオラ・ダ・ガンバ)による古楽器トリオの演奏会を聴きに行きました。場所は三鷹にあるNaturalというミュージックBar。20名ほどしか入れない贅沢な空間での演奏会です。普段はここにチェンバロなどの鍵盤楽器が加わるのですが、今回は通奏低音としてヴィオラ・ダ・ガンバのみ!ですが、これが大成功でした。それぞれの声部がはっきりとされ、糸のように編まれていく感覚。それぞれの楽器の音色も活かされ、あの空間ならではの素晴らしい演奏でした。古楽器は現代の楽器に比べると響きが抑えられていて、音に厚みがあります。ですが、音の丸みや柔らかさは人間の耳に心地よく、「こんな音がピアノでも表現できたら…)と感じました。
先日、とある生徒さんが「今度学校の演奏会でピアノを弾くことになったから、細かいところを教えてください。」と言ってきました。「オーディションがあって、選ばれたんだ!」と嬉しそうに。「え?そうなの?知らなかった~!」と思わず嬉しくなりました。学校の先生からもらった伴奏譜を自分で譜読みして、自分で練習して、自分でオーディションに挑戦…。ピアノを教えていて、こんなに嬉しいことはありません。
私はピアノが生徒さんの日常にあること、生徒さんの自信につながること、それがレッスンの目標の一つです。楽譜を読んで演奏する、は誰にでもできることではありません。この子にとってピアノは「他の人よりできること」として活きているんだなぁ、と嬉しくなりました。
スタッカート(Staccato)について書いてみようと思います。
音符の下や上についた小さな点がスタッカート記号です。基本的には「短く、はねるように弾く」と説明されるでしょう。この「はねるように弾く」というのが意外と難しいのです。トランポリンと違ってピアノの鍵盤はバウンドしないし...そこで私は「鍵盤が火傷しそうに熱い!」か「氷のように冷たい!」と想像して弾いてもらいます。すると「熱っ!」「冷たっ!」と指が鍵盤に対して「反射」します。この「反射」の動きが、軽くて短くて、切れの良いスタッカートに繋がるのです。
(※もちろん例外もあって、重ためのスタッカートや柔らかいスタッカートなど、曲によってスタッカートも表情や色を変えるべきなのです。今回は基本的なスタッカート奏法についてお話ししてみました。)
私はピアノ講師の傍ら、賛美歌工房という新作の賛美歌を創作する団体に所属しています。メンバーの皆さんと様々な意見交換をし合って、日本語を大切にした賛美歌作りに取り組んでいます。
そこで私が学んだ大切なこと。それは、日本語はほぼ「一音に一語」ということです。そんなの当たり前、と思う方も多いと思いますが、例えば英語などは「一音に一単語」のせることができるのです。
賛美歌工房では、音の長さや高低感、フレーズを意識しながら、自然な日本語として伝わる旋律を目指して創作に励んでいます。
ピアノ演奏となんの関係が?と思われるかもしれませんが、私はその「一音に一語」ということを演奏において常に意識しています。一音一音の繋がり、つまり旋律にはどんな流れがあるのか、聴いている人にとって自然な流れとするために、どんな指の使い方をすれば良いのか、そんなことを考えながら演奏に取り組んでいきたいと思っています。
「練習しても弾けない」「音を追うので精一杯」など、よく耳にする生徒さんのことばです。技術的なことはさておき(技術は練習すれば身につきます)、なぜ弾けないのか、どうすれば弾けるようになるのかを考える必要があります。それは「曲の構造を知る」ことだと思います。
どんなにシンプルな曲でも「設計図」があります。例えばハ長調の「チューリップ」ならば始まりは "ドレミ、ドレミ、" と3音の上昇が2回続きます。とても簡単なことかも知れませんが、これを理解することで次の音を予見し、指は自然と鍵盤の上を進むのです。複雑で難しい曲ならなおさら、コード進行やメロディーの構造を知ることが大事です。「そうか!」と納得した瞬間に「難しい」呪縛から解かれるはずです。レッスンでは、楽譜を読み解く作業を必ず行います。聴き手に対してより説得力のある演奏をする、それが目標です。
ことばには「自然な流れ」があります。例えば「おはようございます」ということば。「お はよう ござ います」と区切るのは不自然な気がします。
音楽の世界も同じで、メロディーに自然な流れを作るための適切な区切りがあります。「フレーズ」というのですが、そのフレーズを理解するのが初めはなかなか難しい。そんなとき、生徒さんとメロディーにことばをのせてみます。歌と同じですね。ですが既存の歌詞を歌うのとは違い、自分で考え付いたことばを音にするのは創作意欲を掻き立てると同時に、適切な区切りを理解するのにも役立ちます。
私たちの何気ない会話も素敵なメロディーに聴こえてきたら...そんなことを想像しながら、自分らしいことば選びを心がけています。
職業柄、日頃から何十人もの異なる「手」を見ています。写真を見ただけで「この手はこの子!」とわかる自信もあります。
成長によって手の大きさや指の筋力が変わることはもちろんですが、それに加えてそれぞれの手には個性があって、その分、ひとつのテクニックを身に着けるのに何通りものやり方があるのではないかと考えています。私はその個性を大切にしたい。全員が全員同じやり方で弾けるようになるとは限らないし、生徒さんと一緒に実験しながら練習方法や弾きやすい奏法を模索することが大事だと思います。自分の手と仲良くなって、ピッタリな奏法を探していくこと、それが上達への近道だと考えます。